皆さんの周りには、土木構造物や建築構造物があふれています。土木構造物は川や湾岸を渡る橋梁や鉄道・自動車の高架橋などであり、建築構造物は住宅やオフィスなどのいわゆる建物です。
これらの構造物は目には見えませんが、様々な荷重、すなわち力を受けています。構造物自分自身の重さ、そして鉄道車両や自動車、人、家具、積雪など構造物に積載される物の重さ、さらに、風や地震の横から受ける力です。構造物はこれらの荷重に耐えるように構造設計され、建設されており、皆さんの安全・安心な生活を支えています。
一方、新たなニーズに応えるため、土木・建築構造物に対する研究・技術開発も盛んに行われています。新たなニーズは様々です。例えば、部材の断面を大きくすることなく、耐えられる力を大きくし、それにより構造物の高さやスパンを大きくしたい、あるいは建設にかかる工期を短くしたり、建設コストを安くしたい。また地震や火災など大規模化・多様化する災害に対する構造安全性をより高くしたいといったニーズがあります。
このような研究・技術開発を行う方法は2つに大別され、1つは実験による方法、もう一つは解析やシミュレーションによる方法です。
大阪工業大学には付属施設として八幡工学実験場があります。この施設の中にある構造実験センターでは、構造実験による研究・技術開発を行うために様々な装置があり、活用されています。この講座は、「土木・建築構造に関する最近の研究」と題して、構造実験センターで行われた研究・技術開発の一部を紹介しながら、土木構造物や建築構造物の仕組み、そして最近の研究や技術開発の動向などを、できるだけ簡単に解説しようとするものです。
講座の第1週では土木構造物を、第2週では建築構造物を取り上げ、それぞれの週の前半では、それぞれの構造物の全般的な概要を説明します。その後、具体的なニーズに対して構造実験センターでどのような実験が行われ、その成果がどのように利用されているかを説明します。
講座の後半では、2つの研究分野を取り上げ、第3週では構造物の耐久性について、最後の第4週では、構造物の耐火性について説明します。
Overview
Taught by
Inoue Susumu