講座内容
東日本大震災の経験と教訓を踏まえ,また多発する国内外での自然災害の発生を受けて,自然災害対策・災害対応策や市民・社会の自然災害への処し方そのものを見直す必要がある。社会での変貌の中,災害や影響自体も変化しており,様々な災害の被害軽減に向けて社会の具体的な問題解決を指向する実践的防災学の礎を築くことが重要である。 その基礎となる災害科学は,事前対策,災害の発生,被害の波及,緊急対応,復旧・復興,将来への備えを一連の災害サイクルととらえ,それぞれのプロセスにおける事象を解明し,その教訓を一般化・統合化することである。 本講座では,東日本大震災における調査研究,復興事業への取り組みから得られる知見や,世界をフィールドとした災害科学研究の成果を社会に組み込み,複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し,苦難を乗り越え,教訓を活かしていく社会システムを構築するための試行を紹介する。 講座は4つの構成で形成されており,各専門の教員が最新の知見や様々な知識・情報を提供する。第1週では,事前の取り組みの紹介も入れた被害実態と今後の教訓を概説し,第2週では,人間・社会科学的な側面を入れた被災地での復旧と復興を紹介する。第3週で,自然科学と防災への役割に視点を置きながら地震・津波のメカニズムと過去の履歴さらに将来予測についての研究事例を紹介する。最後に,仙台市で開催した2015年国連防災世界会議での議論と仙台防災枠組の取り組み,防災啓発・防災教育の現状,記録・伝承にいどむ取り組み,被災地での避難訓練事例などを紹介して実践的防災学の事例と将来を議論する。 なお,本講座は,「東北大学サイエンスシリーズ」の第2弾です。講座内容は,2018年1月に開講した第1回と同じ内容となり,課題内容の一部を変更しております。